まだ母が散歩が出来ていた頃、途中で犬を散歩さている人によく出会った。
その中に、顔も白くなり、身体も色が薄くなったラブラドールがいた。
夏には、歩くときも下を向き、穏やかだけど長い坂道を登った所では、息も荒くお腹をべったり地面につけて休んでいた。
腰が痛く、散歩の途中でしばしば足を止めて休む母の姿に重なるものがあり、その老犬に思い入れがあった。
母は体調を崩し、リハビリに通うことも出来なくなり、次第に散歩にも行かなくなった。
そして、その犬を見かけることもなくなった。
昨日、近くのスーパーに出かけた帰りに、久しぶりにその犬を見かけた。
後ろ足が弱ってきて、お尻が左右に揺れている。
しかし地面に平行に伸びているしっぽは、ゆっくりだけど嬉しそうに揺れている。
意外だったが、やっぱり外を歩けて気分がいいのだろう。
信号では、しっかりお座りして前を向いている。
何だか嬉しくなって、勇気をもらった気がした。
母はもう外を歩くことは出来ないが、体調が良くなれば、車イスで散歩出来るようになるかもしれない。
その日まで…。
また会えるといいね。