夜中、母がすごい勢いで私の部屋まで来た。
「怖い、怖い、目がかけた」
緑内障で、ほとんどの視野が欠けてしまっている。
目が覚めて、真っ暗で驚いたのだろう。
認知が下がる夜中のトイレは大変だ。
今日は下着を下ろすことも上げることもできない。
腰痛で用も足さずに、部屋にもどった。
しばらく背中をマッサージしてから、「おやすみ」を言って自分の部屋に戻った。
母が「ありがとう」「ありがとう」と、何度も繰り返す。
胸が痛くなる。
ただトイレに行っただけなのに。
母自身の大変さが、ありがとうという言葉にあらわれてるのだろう。
「大丈夫よ。ありがとう。また声をかけてね」
そう言って、部屋を後にした。