プチひきこもりの、介護日記

両親介護 認知症 シングル 50代 プチひきこもり

子守歌

母は、長いこと幼稚園に勤めていた。

いろいろなわらべ歌や童謡を知っていた。

私が大人になってから、聞き覚えのない歌を歌うことがあった。

私が子供の頃には聞いたことのない子守歌だった。

お父さんが寝ていて、娘の私がお父さんの眼鏡をのぞきこんでいるような歌詞だった。

初めて聞いたとき、メロディのせいか、ちょっと寂しい気持ちになったのを覚えている。

たまに思い出しては、母に歌ってもらった。

今では母はもう歌を歌うことはない。

尋ねても、思い出すことはないだろう。

頼めば、いつでも歌ってもらえるものだと思っていた。

母の場合はてんかん認知症が急に進んだせいもあるだろう。

親は年老いていくということが、実感出来ていなかったのかもしれない。

母の声で聞けなくても、せめてと思いスマホで検索してみたが、見当たらない。

母との思い出がひとつ失われた気分になった。

認知症はこういう病気だとわかっていた。

今までは、母のもの忘れを認知症だからと受けとめられていた。

それは母が忘れても私が覚えていたからかもしれない。

私の知らない母は失われていくのだ。

ならばせめて、私が覚えている母を大切にしようと思う。

認知症が進んで大変なことも増えてきた。

そんな母の姿も大切に覚えていたい。

いい思い出ばかりではないが、母の生きた証なのだから。