少し前まで、布を結ぶのが母のブームだった。
洋服の袖、毛布、靴下、とにかく結び目をつくっていた。
今は物をぎゅっとつかむのがブームになった。
何か不安で、物を握りしめているのではないかと、少し気になる。
敷布団のカバーをぎゅっと握りしめ、そのまま動くので布団はぐちゃぐちゃだ。
小さな子どもが、タオルを引きずりながら歩いてるならかわいいが、90才近い母が、布団を引きずりながらハイハイしている様子は、何と言えばいいのか…。
小柄で痩せて、もうひとりでは歩けなくなった母の、一体どこにそんなパワーがあったのか。
それでも少しほっとする。
認知症がすすみ、すっかり様子が変わってしまった母だが「まだまだ大丈夫」。
よくわからないがそんな気分にさせてくれる。