認知症介護の夜は長い。
夜、布団に入ってもなかなか寝つかず、うとうとしては起き出し、度々転倒し、ついには額を切り、救急車で運ばれた母。
夜寝られるように薬を飲むことになった。
飲んでも直ぐに寝られるものではないらしい。
夜8時に飲んでも寝るまで何時間もかかかり、しっかり寝ついたのは夜中3時なんてこともある。
その間、起き上がって動くことも多く、目がはなせない。
母が転んだ時に、ドキッとした感覚が忘れられない。
暗闇の中、眠気でボーとして立ち上がる母に、つい「危ないから立たないで」と何度も言ってしまい、母を不機嫌にさせてしまう。
服だけでなく、パンツまで脱ぐこともあり、そのまま用をたされては困るので、その度にパンツを履かせる。
履かせては脱ぐのくりかえし。
母に「あんたおかしいわよ」と言われて、心の中では「どっちがよ~」
母の横でうたた寝をしてしまうこともある。
気づくと母は棚の中の物を引きずりだし、日記帳を破っていた。
テレビを引き倒そうとしたり。
とにかく「お願いだからやめて」と言いたくなることばかりする。
まだ用事が残ってたり、寝不足だったり、余裕のないときはイライラした態度になってしまい、母も反抗的になる。
「うるさい!」ある時母に言われて、思いもよらない言葉に、とっさには理解できなかった。
眠気でわからなくなっている母の言葉を気にしても仕方ないのだが、やっぱりこたえる。
暗闇の中、いつ寝ついてくれるかもわからない。
気持ちに限界を感じる。
それでも次の日、穏やかで優しい母の一面に触れると、「やっぱりこれでいいのかな」と思う。