少し前、母は食欲旺盛だった。 何でもない普通のものでも、「おいしい、おいしい」と食べてくれた。 食が細くなった時期もあったので、食べてくれることはうれしく、体力面でも安心することができた。 ところがここ最近、「おいしい」と言わなくなってきた。 同…
コロナの流行がなかなか収まらない。 オミクロン株は感染力が強いので心配だ。 母が高齢だというのもあるが、母の状態で入院は難しいだろう。 あれだけ叫べば、周りにも迷惑だ。 何より拘束されれば、更に大声になり暴れるだろう。 そうなれば認知症も一気に…
畳や布団の上で、用を済ませるようになっていた母だったが、てんかんの薬を止めてから、ぴたりと止まった。 紙パンツにするようになり、そしてたまに「トイレ」と教えてくれる。 「トイレ」と言われて連れていくが、出ることはほとんどない。 すでにパンツが濡れ…
母は布を強く握りしめるようになった。 布団カバー、毛布、枕カバー、なんでも。 カーテンをつかんでは、寝ころんだままターザンのようにぶら下がっていることも。 今年で90才になる母。 体も小さくなり、腕も足もすっかり細くなった母の一体どこにそんな…
寝ているときと食べているとき以外は、ほとんど叫び続けている母。 その声は時々おそろしく大きい。 なだめても、なかなか上手くいかない。 耳元でもお構い無しで叫ぶ。 始めの頃は、母の喉と体を心配していたが、今では私の耳とストレスも心配だ。 姉にすす…
母はてんかんの薬をやめてから、信じられないくらいの大声で叫ぶようになった。 認知症もてんかんも混ざりあって、もう区別はつかない。 朝も夜中もなので、本人にも家族にも負担になるのだが。 てんかんの薬を飲んで、寝たようになってしまったので、姉が「…
苦手な先生に会うとき、姉は気合いをいれたメイクと服になる。 圧をかけるつもりらしい。 先生はパソコンのカルテと患者である母の顔しか見てないと思うのだが。 付き添いである娘の顔はまだしも、服なんて…。 私たちは脇役なのだから。 そして何故か靴下は…
少し前まで、布を結ぶのが母のブームだった。 洋服の袖、毛布、靴下、とにかく結び目をつくっていた。 今は物をぎゅっとつかむのがブームになった。 何か不安で、物を握りしめているのではないかと、少し気になる。 敷布団のカバーをぎゅっと握りしめ、その…
母が叫ぶようになった。 日によっては一日中。 夜中は近所に気をつかい、何とか静かにさせようとして気持ちに余裕がなくなってしまう。 認知症とてんかんと、混ざりあって区別は難しい。 夜中、母の大声で目が覚めることもしょっちゅうだ。 朝、母の声で起こ…
初めて家族を見送った。 いつもは予防接種も痛がり、足をばたばたさせていた父。 入院中は、苦しいとも痛いもと帰りたいもと言わなかった。 つらい状況のなか、私たちを心配させたり困らせるようなことは言わなかった。 最期には間に合わなかった。 病室に横…
母は、長いこと幼稚園に勤めていた。 いろいろなわらべ歌や童謡を知っていた。 私が大人になってから、聞き覚えのない歌を歌うことがあった。 私が子供の頃には聞いたことのない子守歌だった。 お父さんが寝ていて、娘の私がお父さんの眼鏡をのぞきこんでい…
ここ数年書き初めをしていたが、今年は両親ともに書けないので、代わりに私が書いた。 私が書いていると、母が横にきてのぞいているので、母に筆を持たせてみた。 母は迷いなく、半紙に力強く筆をおろした。 何を書くのかと思って見ていたら、筆をおろしたま…
今年のお正月は控え目にお祝いをした。 何年も前から、お雑煮のお餅はやめている。 軽く潰したご飯を一口大に握って焼いて、お餅の代わりにしている。 飲み込む力、噛む力が衰えてくるので、食べるのが難しいものも増えてくる。 小さく切ったり、とろみをつ…
最近、病院で選択を迫られることが続いた。 自分のことならまだしも、家族のこととなると、決めた後も不安が残る。 医学的な知識も経験もない私たちは、医師の言葉に逆らってまで、「こうして欲しい」と言うことはなかなか出来ない。 父に対しても、母に対して…
こないだの通院の時、母はずっと寝ていた。 血圧が低かったのだ。 時々あるのだが、今回は看護師さんがすごく気にしていた。 血圧計を変えて何度もはかり直したり、脈を足の甲でとってみたり。 大きなイビキと、看護師さんのその様子に私たちも少し不安を感…
この2ヶ月ぐらいで、母の認知症が急に進んだ。 それに従い、私の母に接する態度も自然と変わっていった。 優しく、穏やかに、明るく、笑顔で、ゆっくりと。 何故もっと早くにそうしなかったのだろう。 そうしていたら、母をもっと笑顔に出来ていただろう。 …
母のタンスの整理をしていると、一度も着てない服や下着がいくつも出てきた。 戦中、戦後の物のない時代を経験してきた母の世代は、物を大切にしたり、もったいないという考える人が多い。 母も新しい服をおろすのはもったいないと言ってなかなか袖を通そう…
「運が悪い」と言うと「気のせい」とか、「気の持ち方」とか言われそうだが。 人生の本当に大切なタイミングで、運の悪いことが続いた。 運が悪かったとあきらめることは出来ない。 必死にあがいて、頑張るつもりだ。 今の状況では、良い結果を期待するのは難しい…
今日は心療内科の日だった。 最近すごく混んで、待ち時間が長い。 今日は初診の患者さんもやけに多い。 コロナの影響があるのだろう。 テレビでは、規制緩和のニュースが流れ、食事したり、旅行したり、久しぶりに楽しんでいる映像が流れている。 新しく現れ…
母が寝つけないことを相談すると、先生が「音楽やアロマや手のマッサージ、大変だけど足湯」が効果的だと教えてくれた。 足湯は大変なので、他を試してみることにした。 20年以上ぷち引きこもりだった私に、アロマと言われても。 そもそもどこに売ってるのか…
姉と私の関係は微妙だ。 元々は仲の良い姉妹だったが、私の病気が原因で深い溝ができた。 長い間、音信不通だった。 両親の介護をきっかけに、また顔を会わせるようになり、今では昔のように普通に話をするようになった。 そして立場も違い、介護に関しても…
緑内障の視野狭窄が進んだ母。 最近はかなり見えなくなってしまった。 そのせいか認知症も急に進んでしまった。 どうしたらいいのだろうか?これからどうなるのだろうか? ついつい、そんなことを考えてしまう。 手を洗う時は、私が片方の手に石鹸をつけあら…
朝早く、母の「お母ちゃん、お母ちゃん」と呼ぶ声で目が覚めた。 見に行くと、裸で横になっている。 おしっこをしてしまったのだろう。 紙パンツを変えようと、近づくと敷き布団がびしょびしょ。 敷き布団だけじゃない。 毛布もタオルケットも、シャツもズボン…
少し前から、泣くことが増えた母。 今度は怒るようになった。 寒いと言うので、服を着せようとすると「チッ」と舌打ち。 「トイレ」と言うので、「行こうと」肩に手をやると「うるさい!」 認知症の周辺症状というやつだ。 なぜ急に私に怒るようになったのか心当た…
認知症介護の夜は長い。 夜、布団に入ってもなかなか寝つかず、うとうとしては起き出し、度々転倒し、ついには額を切り、救急車で運ばれた母。 夜寝られるように薬を飲むことになった。 飲んでも直ぐに寝られるものではないらしい。 夜8時に飲んでも寝るま…
介護保険は車イスのレンタルしか使ってないが、これからのことを考えて更新の申請をした。2段階上がって介護4になってしまった。更新の日には、調子が良い方ではなかったが、介護3になるかと思っていたので驚いた。最近、急にいろいろなことが出来なくなっ…
だいぶ寒くなってきたが、相変わらず母は服を脱いでしまう。 先生にはレビー小体型認知症なので、自律神経が正常に働かず、脳が暑いと感じているからだと言われている。 夜、パンツ1枚で布団に入ることもある。 そんな時は、掛け布団で調節する。 昼は服を…
父が腰を痛めてかなり経った。 だいぶ良くなってきたが、まだかなり痛いようだ。 トイレに行くときは、私が手を引いて歩いていく。 母は足腰が弱り、普段から手を引いてトイレに行くことが多い。 父をトイレに連れていってる時に、母がトイレに来ることがあ…
母はレビー小体型認知症。 体調や薬が、症状に大きく影響する。 その日の状態に一喜一憂しても仕方ないのだが、調子が良ければ「また明日も」と期待をする。 調子が悪ければ「また良くなることもあるだろう」と期待する。 困った行動が続いて繰り返されると、…
父が転んだ翌日のこと。 朝起きると、母の部屋の入り口で人が横たわっていた。 母が寝ぼけたのかな?と思ったが、何か引っかかる。 何か黒い?服の色が紺色…! 父だ! 普段はベットに寝ている父が床に横たわっているのだ。 何事かと焦って、声をかけると「ト…